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イスラムの風景① パキスタン

2017年09月27日

「オーナーさんおすすめの国はありますか?」

 

海外一人旅に興味のある方に、時々聞かれる事がある。出来れば、世界中どこへでも旅に出てもらいたい。しかし昨今の世界情勢では、強くは勧められない国々もある。

 

特に、イスラムの国々だ。

 

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私が初めてのイスラムの本質を見たような気がしたのは、パキスタンという国だ。パキスタンは実は、中国の西の果てとつながっている。

 

中国のウイグル自治区を過ぎ去って、さらに5000mを越える高地の峠を越えて、軽い頭痛を覚えながらようやくパキスタンに辿り着く。

 

峠を越えるバスの中では、唯一の外国人である私をおもしろがって、出稼ぎのパキスタン人から様々なお菓子やお茶が回ってくる。とても暖かくて、忘れがたい道中だった。

 

「故郷が近づいて来た。待ちきれないよ」

 

中国で働くパキスタン人の彼らは、そわそわしながら故郷の風景を待つ。

 

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峠を越えた先にあったのは、高い山々に囲まれた美しい集落だった。粗末な宿を寝床に選んで、私はしばらくその村にいた。

 

毎日集落を散歩して、時には村の人に一杯のチャイをごちそうになり、時には村の子供達とじゃれあって過ごした。

 

そこの村には、なんの暴力も、なんの狂気もなくて、穏やかで静かな暮らしがあった、皆、その静かな暮らしに何の疑いも持っていなくて、その村の中で、将来に対する不安を持っていたのは私だけであるように思われた。

 

TVでイスラムの暴力性が語られるたびに、私はあの村を思いだす。旅人にはひときわやさしくて、暖かいまなざしの村人達を思う。

 

朝、日の出前になると、宿のおやじは屋上に出て、朝の礼拝を始める。

 

 

夜が明ける前は、真っ暗だった集落が、山の背から出て来た日差しによって徐々に光りに満ちて行く。

 

屋上からは、村の美しい川や、木々や、動き始める家々や、厳しくも柔らかい山肌が見えた。

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村の全てが朝日に包まれると、宿のおやじは仕事を始める。聞き取れない現地の言葉で何か呟いたので、私はその意味を尋ねた。

 

「今日も太陽が来てくださった。今日一日、私は生きてく行く事ができます。アラーに感謝します」

 

私はその言葉の中に、イスラムの本質を見た気がした。

 

いつか、パキスタンやイスラムの国々が、気軽に旅できる世界になれば良い。とても旅人に優しい場所だから。

 

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